倉庫火災が経営に与える影響(特別利益、特別損失の観点から)

 

昨年11月に大阪市此花区の物流倉庫での火災事故が発生しました。こういったニュースは記憶に新しい人も多いのではないでしょうか?

 

この時期になると空気が乾燥することもあり、火事が発生しやすいのは誰もが知る話です。

 

それでは、倉庫業での火災事故は近年増えているのでしょうか?調べてみましたが、実態としては増えてはいないようですね。

 

時期的なニュースとして取り上げられることが多いため倉庫での火災事故は増えているように感じているかもしれませんが、日本国内の建物全体でも毎年2万件前後火災が発生。そしてその中で倉庫の火災も全体として、特に増えても減ってもいないのは図表1からも見て取れます。

 

図表1

  倉庫 建物全体 構成比
2020 482 19,365 2.50%
2019 553 21,003 2.60%
2018 447 20,764 2.20%

           (出典:総務省消防庁 消防統計より)  

今回は、火災が起きた後の決算書からどういった流れになるのかを見ていきたいと思います。

 

取り上げるのは近年発生した大規模火災の1例としてアスクルを見ていきたいと思います。

 

【火災事例①】

アスクル株式会社 ASKUL Logi PARK 首都圏 

■2013年7月20日竣工

■鉄筋3F立て 延べ面積:71,891.59m(焼損床面積:約 45,000 ㎡)

■2017年2月16日発生~2月28日17:00鎮火

 

この火災は発生から鎮火まで296時間もかかり連日ニュースでも取り上げられていました。データが少し古いですが、下の図表2からも鎮火までの時間が突出しているのは見て取れると思います。

 

図表2

f:id:hatarakuplace:20220312195905p:plain(出典:「埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた防火対策及び消防活動のあり方に関する検討会報告書」より抜粋)

 

本火災の出火場所は、1階北西部の端材室であると考えられています。結果的に延べ面積の60%前後が燃焼してしまう損失となってしまいます。

 

事故の概要が分かったところで、2017年4月5日に発表されている決算書(図表3~5)から見てみましょう。

 

事故発生直後の決算書では損失101億、保険適用46億円と大規模な損失が発生しているのが確認できると思います。

 

図表3                         

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                       (出典:アスクル決算書より抜粋)

図表4

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(図表5)

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そして期末の最終決算の結果として、特別損失112.5億、特別利益(受取保険金)49.2億と発表。しかし、この後アスクルは350名の雇用確保と著しく低下した出荷能力を引き上げるべく奔走し、見事V字回復をしています。

 

(図表6)

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(図表7)

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